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「えらいね」より「ありがとう」。作務をしてくれた後輩に、先輩が伝えたひとこと

一宮中部道院新たな感謝の発見イメージ


稽古が始まる前の静かな時間。 雑巾を絞る音、床を拭く足音、道場具を整える気配――。
一宮市の中心部に位置する私たち少林寺拳法 一宮中部道院の修練場は劔正幼稚園を使用させていただいており、
稽古前後の「作務(さむ)」を大切にしています。
掃除や道場の整備は、単なる「準備」や「片付け」ではありません。
拳士としての心を整える、大切な修行の一部です。

先日、稽古前にいつも通り作務をしてくれていた後輩の拳士に、ある先輩がこう声をかけました。
「ピカピカにしてくれてありがとう。おかげで気持ちよく稽古できるよ」
たったこれだけの、ごく自然なひとことです。
でも、この「ありがとう」には、実は子どもの成長にとって、とても大きな意味が隠れています。

一宮中部道院の稽古前の作務の様子

「褒める」と「感謝する」は、似ているようで違う

「えらいね」「よくできたね」――。
子どもを励ますとき、私たちはつい「褒め言葉」を選びがちです。
もちろん、褒めることが悪いわけではありません。
ただ、褒め言葉には少し注意が必要な面もあります。
それは、褒める側が無意識のうちに「評価する側」に立ってしまうということです。
「褒められるからやる」「褒められないと物足りない」という気持ちが、知らず知らずのうちに育ってしまうこともあります。

一方で「ありがとう」「助かったよ」という感謝の言葉は、評価ではなく、事実と気持ちをそのまま伝える言葉です。上から評価するのではなく、対等な立場で気持ちを伝える。
だからこそ、伝えられた側の中に「自分は誰かの役に立てている」という実感――貢献感――が、
静かに、でも確かに残っていきます。

一宮中部道院の修行の一つである作務をしてくれた後輩に先輩が伝えた「ありがとう」も、まさにこの感謝の言葉でした。

一宮中部道院新たな感謝の発見イメージ2

「自他共楽」の教えと、日々の作務

少林寺拳法には「半ばは自己の幸せを、半ばは人の幸せを(自他共楽)」という教えがあります。

技を磨き、強くなることは、自分だけのためではありません。
その強さや心配りを、誰かのために使うこと。
道場での何気ない作務の一場面にも、この教えは息づいています。

床を拭く。道場具を整える。
それは「言われたからやる仕事」ではなく、「仲間が気持ちよく稽古できるように」という思いやりの表れです。
そしてその思いやりに気づき、先輩が「ありがとう」と言葉にして返す。
この小さなやり取りの積み重ねが、道場という場所を、技を習うだけでなく「人として育つ」場所にしているのだと思います。

子どもが変わる、感謝のひとこと

作務をしてくれた後輩は、先輩からの「ありがとう」を聞いて、少し照れくさそうに、でも嬉しそうな顔をしていました。
「褒められた」からではなく、「自分がしたことが、誰かの役に立った」と実感できたからこその表情だったように思います。
道場での指導は、技術の指導だけではありません。
こうした日々のやり取りの中で、子どもたちは「自分は必要とされている」という自己肯定感を育んでいきます。
それは、稽古でつまずいたときや、壁にぶつかったときにも、その子を支える心の根っこになります。

道院長である私の指導法の変化が起きた瞬間。

「えらいね」の代わりに、「ありがとう」。 評価の言葉の代わりに、感謝の言葉。

言い換えてみると、たったそれだけの違いです。でも、その違いが、子どもたちの表情や、主体的な取り組みの姿勢を、少しずつ変えていくのだと感じています。

一宮市で少林寺拳法を指導する立場として、これからも技の指導と同じくらい、こうした日々の言葉がけを大切にしていきたいと思います。

この光景を見て、指導者として考えたこと

正直に言うと、この作務でのやり取りを目にしたとき、私は自分自身に問いかけずにはいられませんでした。

「今まで自分は、子どもたちを本当の意味で伸ばせていたのだろうか」と。

良かれと思って伝えてきた「えらいね」「すごいね」という言葉が、もしかしたら子どもたちを、評価を待つ側に立たせてしまっていたのかもしれない――。
そんな問いが、静かに、でも確かに胸に残りました。

けれど同時に、これは落ち込むための気づきではなく、次に進むための気づきだとも感じています。
今後は、子どもたちが誰かのために動いたその瞬間――今回のような作務の場面はもちろん、稽古中のちょっとした支え合い、後輩への声かけなど――を見逃さず、その都度「ありがとう」を言葉にして伝えていく。
そうやって、一宮中部道院ならではの、感謝を軸にした指導のかたちを、自分なりに確立していきたいと本気で思っています。

💡 【あわせて読みたい指導コラム第二弾】

「うちの子、失敗を怖がって新しいことに挑戦しない…」「ちょっと難しいとすぐ諦めてしまう」とお悩みの保護者様へ。
できた結果(評価)ではなく、一歩踏み出したプロセスに「感謝」を渡すことで、子どもが自ら壁を乗り越えた実例と心理学的アプローチをご紹介しています。

👉 「結果を褒める」教育の限界と、子の主体性を高める「貢献感(承認)」の構造はこちら

💡 【あわせて読みたい指導コラム第三弾】

「周りの子と比べてすぐ落ち込んでしまう」「どうせ無理と諦めてしまう」というお子さんへ。他者比較ではなく過去の自分と向き合うことで、折れない自己肯定感を育てる指導法をご紹介しています。

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この指導者としての気づきと挑戦は、まだ始まったばかりです。
これから私自身がどう変わっていくのか、そして道場の子どもたちがどんな拳士に育っていくのか――
その過程を、これからのブログで少しずつお伝えしていきます。
*ブログ意見を頂戴できれば幸いです。

少林寺拳法 一宮中部道院 道院長 北川博康先生へ直接ご質問などがあればこちらから

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